次の冬季五輪はどこ?2026ミラノ日程・新種目と札幌断念の深層を解剖
雪と氷の祭典が再びヨーロッパのアルプスへと還ってきます。世界中のスポーツファンが注視する「次の冬季オリンピック」は、イタリアの経済拠点と名峰が手を組んだ2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ大会です。さらにその先を見据えると、国際オリンピック委員会(IOC)は2030年、2034年の開催地まで異例のスピードで内定させ、冬季五輪の未来図を一気に描き出しました。
一方で、かつて開催の最有力候補と目されていた日本の札幌市は、なぜ招致の旗を降ろすに至ったのでしょうか。本稿では、2026年大会の全容や観戦スケジュール、注目の新種目から、開催地選定の裏にある構造変化と招致断念の真相まで、現場取材の視座を交えて余すところなく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:次回はイタリア開催の「2026年ミラノ・コルティナ大会」。2026年2月6日〜22日に開催され、新種目スキーモ(山岳スキー)が初採用。
- 要点2:2030年はフランス(フレンチ・アルプス)、2034年は米ソルトレークシティに決定。IOCは気候変動に対応すべく「既存施設重視」の選定へと劇的転換。
- 要点3:札幌市の招致断念の根底には、東京五輪汚職のトラウマによる市民の根強い不信感と、除雪費用など足元の生活不安に対する行政の対話不足が存在。
【2026年ミラノ・コルティナ】大会日程・会場マップと日本時間放送の全貌
第25回オリンピック冬季競技大会となる2026年ミラノ・コルティナ大会は、2026年2月6日から2月22日までの17日間にわたり開催されます。引き続いて行われる2026冬季パラリンピック日程は、2026年3月6日から3月15日までの10日間です。2つの都市名を冠した史上初の共同開催であり、イタリアでの冬季五輪開催は2006年トリノ大会以来、20年ぶり3度目となります。
広大な北イタリアを舞台にしたミラノコルティナ会場マップは、移動距離にして数百キロに及ぶ広域分散型が最大の特徴です。拠点は大きく4つのクラスターに分かれています。
- ミラノ地域:開会式(名門サッカー場「サン・シーロ」)、アイスホッケー、フィギュアスケート、ショートトラック
- コルティナ地域:女子アルペンスキー、ボブスレー・スケルトン・リュージュ(そり競技)、カーリング
- ヴァル・テッリーナ地域(ボルミオ/リヴィーニョ):男子アルペンスキー、スノーボード、フリースタイルスキー、新種目スキーモ
- ヴァル・ディ・フィエンメ地域:スキージャンプ、クロスカントリースキー、ノルディック複合
- ヴェローナ:閉会式(古代ローマの円形闘技場「アレーナ・ディ・ヴェローナ」)
日本の視聴者にとって最大の関心事となるのが次回冬季五輪日本時間放送予定と時差の影響です。イタリアと日本の時差は8時間(日本が先行)。現地で午前中から昼にかけて行われる屋外雪上競技は、日本時間では夕方17時〜21時前後のゴールデンタイムに重なり、比較的リアルタイムで視聴しやすい時間帯となります。
しかし、フィギュアスケートやアイスホッケーなど、現地の夜(19時〜21時開始)に組まれる人気屋内種目は、日本時間では深夜27時(午前3時)〜早朝5時という過酷なスケジュールです。NHKや民放各局の地上波生中継に加え、TVerなどの見逃し配信プラットフォームをいかに活用するかが、日本国内での観戦スタイルを左右することになります。
新種目「スキーモ(山岳スキー)」の衝撃|雪上サバイバルが五輪の勢力図を変える
今大会で世界的な脚光を浴びているのが、初採用となる冬季五輪新種目スキーモ(Ski Mountaineering / 山岳スキー)です。欧州アルプス地方発祥の伝統競技であり、人工的に整備されたスキー場ではなく、大自然の険しい雪山を自力で登り、そして滑り降りるタイムを競う極限のエンデュランススポーツです。
競技では、スキー板の裏に「シール(スキン)」と呼ばれる滑り止めを貼り付けて急斜面を登坂(ハイクアップ)し、スキーを外してザックに背負い雪壁を駆け上がるセクションも存在します。山頂で素早くシールを剥がしてビンディングを滑走モードへと切り替え、未圧雪のバーンを猛スピードで滑降します。ギアの脱着にかかる数秒のロスが勝敗を分けるため、極限の体力だけでなく、研ぎ澄まされた判断力と手先の器用さが要求されます。
ミラノ・コルティナ大会で実施されるのは、短距離でスリリングな展開が続く「スプリント」、男女ペアがタスキをつなぐ「混合リレー」、そして「個人戦」です。欧州勢が圧倒的な強さを誇る種目ですが、近年は日本のトレイルランニングや山岳アスリートからも挑戦者が現れており、雪上サバイバルとしての見応えは既存のスピード系競技を凌駕する熱気を帯びています。
【開催地一覧と年表】2030年フランス・2034年ソルトレークシティへ続く潮流
IOCは近年、気候変動による開催可能地の減少と、莫大な施設建設費に伴う財政リスクを理由に、開催都市の選考方式を劇的に転換しました。かつてのような華やかな「立候補都市による決選投票」を廃止し、将来開催地委員会との水面下の個別対話を経て、一気に複数大会を固定化する戦略をとっています。
その結果、2024年7月のIOC総会において、2030年大会をフレンチ・アルプス(フランス)に、2034年大会をソルトレークシティ(アメリカ)に一括内定させました。さらに2038年大会についても、スイスを「最優先候補」として対話を継続する異例の長期ロードマップが確立されています。
これまでの歴史と今後の決定都市をまとめた冬季オリンピック開催地一覧および比較データを以下に示します。
| 大会・年 | 開催都市(国) | 日程・決定ステータス | 特徴・選定の背景と論点 |
|---|---|---|---|
| 第24回(2022) | 北京(中国) | 終了 | 史上初の夏冬両大会開催都市。ほぼ全量人工雪での運営が議論に。 |
| 第25回(2026) | ミラノ・コルティナ(イタリア) | 2026年2月6日〜22日 | 史上初の2都市連名・広域分散型。既存施設利用率90%超を標榜。 |
| 第26回(2030) | フレンチ・アルプス(フランス) | 2030年開催(条件付き内定) | ニースの氷上競技とアルプスの雪上競技を結合。政府保証書の提出が条件。 |
| 第27回(2034) | ソルトレークシティ(アメリカ) | 2034年開催(正式決定) | 2002年大会の施設を100%再利用。巨額の民間資金と盤石なインフラ基盤。 |
| 第28回(2038) | スイス(候補) | 優先対話権を付与 | 国内全土に分散した脱・建設型モデル。2027年までに計画を精査予定。 |
冬季オリンピック歴代開催国を振り返ると、1972年札幌、1998年長野と、日本もかつて確固たる存在感を示していました。しかし、近年のIOC開催地選定経緯が示すのは、「新設施設をゼロに近づけ、すでにワールドカップ級の国際大会を日常的に開催できるインフラを持つ限られた地域でのローテーション化」という現実です。
なぜ札幌は招致を断念したのか?住民投票見送りと東京五輪汚職が落とした影
日本国内で最も痛恨のニュースとなったのが、札幌オリンピック招致断念理由を巡る一連の顛末です。1972年大会のレガシーを継承し、北海道新幹線の札幌延伸計画とも連動させて2030年大会の招致を先導していた札幌市は、なぜ最終的に白紙撤回へと追い込まれたのでしょうか。
最大の転換点は、2021年に開催された東京五輪・パラリンピックを巡る大規模な汚職・談合事件の発覚でした。大会組織委員会の元理事に対する受託収賄罪や、テスト大会を巡る独占禁止法違反での起訴が相次ぎ、日本国内における「五輪ビジネス」に対する信頼は音を立てて崩壊しました。地元メディアや市民団体の世論調査において、札幌五輪開催への反対意見は瞬く間に過半数を超え、最大で6割以上に達したのです。
札幌市の秋元克広市長は記者会見で「市民の理解なしには進められない」と繰り返したものの、市議会で求められた「住民投票の実施」を一貫して見送り続けました。この姿勢が市民の目には「民意を無視した強行突破」と映り、感情的な分断を決定的なものにしました。
さらに、実質的な財政懸念が追い打ちをかけました。札幌市は大会運営費を約2800億〜3000億円と試算していましたが、近年の資材高騰とインフレを背景に「実際には数千億円規模の市民負担が生じるのではないか」という疑念が払拭できませんでした。特に豪雪地帯である札幌において、莫大な除雪費用や老朽化インフラの更新を抱える中で、「なぜ今、数千億円を使って五輪なのか」という生活実感を伴う問いに対し、推進派は明確な経済効果とレガシーのビジョンを提示できませんでした。
結果として、IOCが2030年と2034年の開催地を抱き合わせで内定させる方針に舵を切ったことで、札幌市は「2034年以降への延期」という選択肢すら奪われ、2023年末に招致活動の停止を正式表明。事実上の完全撤退へと至ったのです。
【実態検証】分散開催がもたらす現場のリアルとネットで渦巻く賛否
2026年ミラノ・コルティナ大会が採用した広域分散モデルは、環境保護とコスト削減の切り札と喧伝される一方で、現場やアスリート、現地ファンからは小さくない懸念の声が噴出しています。
SNSや現地メディアの報道で浮き彫りになっている生の声と現実的な問題点は以下の通りです。
- 移動距離による「一体感の喪失」:ミラノからコルティナまでは陸路で約400km、車で5時間以上を要します。選手村も各地に分散されるため、異なる競技の選手同士が交流する「オリンピック特有の祝祭感」が希薄になるという指摘が現場関係者から上がっています。
- そり競技場(スライディングセンター)の迷走:コルティナの歴史あるコースの再建工事は巨額の入札不調と環境破壊への反発に見舞われ、一時はオーストリアやスイスでの国外開催が検討されるなど混乱を極めました。最終的には地元改修で決着したものの、突貫工事による安全面への懸念が残されています。
- 高騰する宿泊費とチケット代:北イタリアの高級リゾート地であるコルティナやリヴィーニョ周辺では、大会期間中のホテル代が通常の3〜5倍に高騰。「一般のファンが現地に滞在して観戦できるレベルを遥かに超えている」という悲鳴が観光客から相次いでいます。
「持続可能な大会」という理念と、商業イベントとしての現実。このギャップにどう折り合いをつけるのかが、まさに今大会の現場で試されています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
ネット上の言説やSNSの議論では、冬季五輪の未来に関して事実と異なる誤解が散見されます。ここで代表的な誤認を是正しておきます。
誤解1:「温暖化のせいで、もうアジアや日本で冬季五輪は二度と開けない」
これは正確ではありません。確かに温暖化によって自然雪が確保できる都市は地球規模で激減しており、カナダ・ウォータールー大学の研究報告では「今世紀末までに過去の開催都市の大半が開催不能になる」と警告されています。しかし、現在のIOCが最優先しているのは「既存の競技施設と運営能力」です。長野や札幌のように国際規格のジャンプ台やコースをすでに維持している地域は世界でも希少であり、将来的に国内の民意形成と環境基準がクリアされれば、再び候補地として浮上する余地は制度上残されています。
誤解2:「フランスやアメリカは巨額の税金を投入して五輪を歓迎している」
これも実態とは異なります。2030年フレンチ・アルプス大会の内定には、フランス国内の政局混迷によって新首相による「財政保証書」の提出が期限ギリギリまで遅れるなど、強い綱渡り状態が続きました。また2034年ソルトレークシティも、既存施設をほぼ100%流用し、税金投入を極力排除した民間主導モデルだからこそ住民合意が成立しています。「どの国でも無条件に五輪招致が歓迎されている」という前提は、もはや過去の遺物です。
【プロの結論】メガスポーツイベントの限界と観戦者が持つべき判断基準
かつてのように「経済成長の起爆剤」として巨大スタジアムを乱立させ、都市を再開発するメガイベントの時代は完全に終焉を迎えました。巨費を投じた施設が大会後に負の遺産となる「白い巨塔(ホワイトエレファント)」化を防ぐため、IOC自らが縮小と分散を容認せざるを得ないのが2026年以降の冷徹な現実です。
札幌の招致失敗が突きつけた教訓は、行政主導のトップダウンで「夢と感動」を押し付ける手法の限界です。生活インフラの維持と環境破壊への危機感が強まる現代社会において、徹底した情報公開と住民との丁寧な対話なしにメガイベントを強行することは、組織の正当性そのものを揺るがすリスクとなります。
この劇的な構造変化を踏まえ、一人の観戦者として大会とどう向き合うべきか。判断の基準は極めて明快です。
- 現地観戦をおすすめできる人:欧州の洗練されたリゾート文化を体験し、広域移動の旅そのものを楽しめる人。富裕層向けツーリズムとして割り切り、歴史的な名峰を背景にした極限のアスリートの戦いを一生の記念として記憶に刻みたい人。
- テレビ・配信観戦に徹するべき人:コストパフォーマンスを重視し、複数競技を漏れなくストレスフリーで追いたい人。時差8時間を逆算し、夜間の雪上競技をゴールデンタイムに楽しみつつ、深夜の氷上競技は見逃し配信を活用するハイブリッドな視聴スタイルが最も賢明です。
【次の冬季オリンピック】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:次の冬季オリンピックはいつ、どこで開催されますか?
A1:次回は2026年2月6日〜2月22日、イタリアのミラノおよびコルティナダンペッツォを中心に開催されます。2都市連名による広域開催となります。
Q2:ミラノ・コルティナ大会で新しく追加された新種目は何ですか?
A2:雪山を自力で登り、滑降するタイムを競う山岳スキー競技「スキーモ(Ski Mountaineering)」が初めて正式種目として採用されました。男子スプリント、女子スプリント、混合リレーの計3種目が実施されます。
Q3:2030年と2034年の開催都市はどこに決まりましたか?
A3:2030年大会はフレンチ・アルプス(フランス)、2034年大会はソルトレークシティ(アメリカ)に決定しました。IOCは気候変動対策とコスト削減のため、既存施設が充実した都市を早期に選定しました。
Q4:なぜ札幌市は2030年冬季オリンピックの招致を断念したのですか?
A4:2021年東京五輪を巡る汚職・談合事件によって市民の不信感が頂点に達したこと、資材高騰による将来の税金負担への懸念が払拭できなかったこと、そして市側が住民投票を見送ったことで民意の合意形成に失敗したことが主な理由です。
Q5:日本とイタリアの時差はどれくらいありますか?テレビ観戦しやすいですか?
A5:大会期間中のイタリアと日本の時差は8時間です(日本が8時間進んでいます)。午前の雪上競技は日本の17時〜21時頃となり見やすい一方、夜に行われるフィギュアスケートなどは日本時間の深夜27時〜翌早朝の放送となります。
まとめ:次世代の冬季五輪が描くスポーツと社会の新しい関係
2026年ミラノ・コルティナ大会は、単なるメダル争奪戦の場にとどまらず、「持続可能性」と「広域分散」という冬季五輪の新たな生存戦略を占う巨大な試金石です。壮大なアルプスの景観のなかで繰り広げられるアスリートたちの躍動と、新種目スキーモがもたらす野生的な熱気は、スポーツ本来の純粋な魅力を私たちに再認識させてくれるはずです。
同時に、札幌の招致断念やその後の開催地選定プロセスが示した通り、五輪というメガイベントは地域社会の合意と生活インフラへの配慮なしには成立し得ない時代に入りました。自然環境と財政のリアリズムを受け入れながら、スポーツの祭典がどのような未来へと向かうのか。北イタリアの銀世界で幕を開ける熱戦から、一瞬たりとも目が離せません。 (出典: 次 の 冬季 オリンピック(Yahoo!ニュース))